井穴刺絡
今年に入り新たな治療法を追加しました。それは井穴刺絡と言って指に鍼を刺し、少し血を出す治療法です。
鍼を刺すだけでも怖いのに、まして血を出すなんて恐ろしいとお思いかもしれませんが、爪の脇にちょっと鍼を刺して一滴二滴と血を出します。刺す時にちょっとチックとしますが、注射をするような痛さはありません。
刺絡とは昔から行われていた治療法で、その治療法に目をつけたのが内科医の故浅見先生で、この方自分の肩こりが治すことができないと、東洋医学書を調べているうちに、この刺絡療法に巡り合ったそうです。
免疫革命という本も出されていました、もうお亡くなりになられた、某大学の先生、爪もみ療法と言えばおわかりの方もいるかもしれません。その方の爪もみ療法のベースになっているのが、浅見先生の井穴刺絡療法です。
この井穴刺絡療法浅見先生の言葉を借りると
井穴刺絡治療を実施していたある日、偶然に井穴刺絡の刺戟に、自律神経異常亢進を抑制(この場合は、井刺H5,副交感神経抑制)する作用のあることに気づいた。(1970年8月)更に筋肉、筋のこりを治すのに体性神経が関係していることを井穴刺絡により理解できるようになった。井穴刺絡により、自律神経、体性神経の両者を調整することにより、多種多様の疾患、例えば、腰痛症、頭痛、心身症、アレルギー症等がよく治るということが分かり・・・・・・
21世紀の医学 井穴刺絡学・頭部刺絡学論文集 医学博士 浅見哲夫
また21世紀の医学の中で、浅見先生は井穴刺絡療法の対象となる疾患として
自律神経の緊張異常により生ずる疾患
高血圧症・低血圧症・気管支喘息・蕁麻疹・胃炎、胃潰瘍、肝炎、膀胱炎、子宮出血、ヘルペス、その他
運動器系の疾患
筋肉痛、こり、関節痛・捻挫・その他
以上のように多くの疾患に対応しており、実際に浅見先生は数多くいろいろな疾患の患者さんを治療されてきてきています。
私も正直最初は本当に効くのか?とちょっと斜に構えてみていました。なぜか、あまりにも手技が簡単でこんなので本当に治るのかと思っていました。
しかし、ある日自分の左肩が痛くなった時に試しに井穴刺絡を試したところ(ちなみにこのときは、左人差し指と小指)に刺絡をしたところ、たちどころに痛みが軽くなり、動きがよくなり思わず
「えっ!」と唸ってしまいました。
第1号の患者さん
さてどうも井穴刺絡療法は効果がありそうだと考えてはいたが、誰に使ってみるか?今まで来ていただいている患者さんに突然、指先に針刺して・・・・なわけにも行かないため、しばらく考えていたところ、いらっしゃいました。
顔面神経麻痺の患者さん、2日ほど前の夜に急に顔面に違和感を感じ、救急受診したところ顔面神経麻痺の診断、この方ネットで色々と調べ顔面神経麻痺には鍼が効果があるらしいということで当院受診。しかし医師より顔には鍼をしないほうがいいといわれたため、顔に鍼りはしないでくださいとのリクエスト。
顔面神経麻痺に顔の鍼はだめ、「どーしよう?」と内心困惑。そこで思い出したのが、浅見先生の21世紀の医学に顔面神経麻痺の治験例が出ていたのを思い出し試してみようと。井穴刺絡患者さん第1号決定!
1回目の治療ではあまり変化なく、2回め治療後あまり変わった様子がなかったが、次に来院された時には見違えるように変化が見られ、本人曰く「80%くらい良くなっています」とのこと。自分でも内心驚きましたがそこは平静を装い「そうでしょう、そうでしょ」ともっともらしく対応。
それ以降は治療の最終段階でもう少し効果を出したいときなどにチクリとさせてもらっています。
患者さんは「なぜ血を抜くんですか?」と不思議そうに問いかけますが、専門的な説明になってしまうので「悪いものを出しているんですよ」と言うと、「そんなんですね」と納得されています。
これでまた治療の引き出しが一つ増えました。